この本は、沖田総司と土方歳三さまとのゴールデンペアの切なさが遺憾なく書き尽くされた新選組本です。沖田総司好きには必読の書といえます。そして、沖田総司&土方歳三のペア好きにとっても必読の書です。
大内さんの「土方歳三」についても紹介していますが。「土方歳三」と「沖田総司」を合わせて読むことで、日野の若者たちの幕末から維新にかけての生き様、死に様がよくわかります。
大内さんは、沖田総司の書を見て、総司に興味を持ち、それ以来ずっと沖田総司というか新選組を愛する作家になりました。この本はそんな大内さんの真骨頂。江戸の試衛館のころから、千駄ヶ谷で総司が没するまでの、総司の一生を、新選組の興亡とともに描いていきます。
その中でも、総司と歳三様のぺア、この二人のお互いへの信頼と愛情が胸に迫るのです。
特に号泣シーンが、千駄ヶ谷で結核のためにやみ衰えた総司が、見舞いに来た歳三に気丈にふるまいながらも、本心を我慢できず、つい歳三さまに追いすがってしまう様子。もう、涙なしには読めませぬ~。歳三さまは沖田総司の細い肩を抱いて叫びます。
泣ける~( ;∀;)
このシーンの全文を引用しますと。
「土方さん!」
総司の追いすがるような声が呼び止めた。
「行ってはいやだ!」
「総司!」
歳三は今まで自分をしばっていたものをすべてかなぐり捨てて、飛びつくように総司の傍へ戻ると彼の肩を掴んだ。痩せた肩だった。その肩だけで総司は泣いていた。
「一人だけ残されるのは、もういやだ」
「俺だって、お前を残して行きたいものか」
「馬鹿!総司の馬鹿!」
歳三の唇がふるえた。
「どうして病気になんかなっちまいやがったんだ!」
こういう沖田総司であってほしいという、大内さんのイメージのままに作り出された沖田総司。多少、甘すぎるところもありますが、でも、私は実際の沖田総司が大内バージョンの沖田総司であったならいいなあと思います。
この本の表紙に使われているのは、実際に沖田総司が書いた自分の名前です。きれいな字を書いた人だったのですね。