うさぎの時代庵

時代小説、時代劇の作品感想を書いています。司馬遼太郎、海音寺潮五郎作品が大好き。新選組、幕末物が大好き。

「花天新選組 君よいつの日か会おう」 越水利江子 大日本図書

越水さんは新選組、特に沖田総司がお好きなのでしょうねえ。この本の前編っぽい感じで「月下花伝」、それから「恋する新選組」と、沖田総司を主役級に添えた作品を書いています。

この本は、タイムとラベルもので、現代の少女、秋飛(あきひ)が、タイムとラベルして、沖田総司にあい、そして・・・というお話。しかも、少女だった秋飛が、幕末では少年になってしまいます。でも、心の中は少女のままで・・・。ただタイムトラベルして偶然沖田総司と出会ったわけではなくて、総司と秋飛の間には、もっと深い、神聖な縁が結ばれていることが、読んでいくうちにわかります。単なるタイムトラベル小説ではなく、ひとひねり加えてあります。

 

この本は少女向けだと思うし、タイムトラベルとSFチックなストーリーで、子供向けだろう・・・などと思ってなめてかかってはいけません。剣術シーンといい、時代背景といい、その他の登場人物といい、けっこう深いものがあります。

 

沖田総司と秋飛の縁を象徴している沖田総司のセリフ。

 

沖田総司といえば、肺結核で死んでしまうのですが。いくらタイムトラベルものでも、この史実は変えていなくて。秋飛がその総司の死から立ち直って、歳三さまの戦っている函館へ向っていきます。その秋飛へ向けて、沖田総司は自分の思いも重ねるのです。

 

秋飛が箱館へ向かう時に語る言葉がこれ。

う~ん、深い、深いぞ。

この本を読むであろう思春期の少女たちに、越水さんは一生懸命大切なメッセージを伝えようとしているのだと思います。

少女達よ、私のように歳取ってから、この言葉の重みが実感されるのだよ・・・。

 

それから、沖田総司の最期とか、土方歳三さまと総司の別れのシーンとか、もう、涙なしには読めないシーンもいっぱいで。終わりにいくにしたがって、涙、涙。でも、読み終わった後、爽やかな気持ちになれます。

 

加えて、現代の視点から見た幕末の人々の行動についても、いろいろ深みのある意見が秋飛のセリフとして出てくるのです。ここらへんは斬新でしたね。

それに、それに、土方歳三さまはすごい美男で描かれています。(それは史実ですけどね)