うさぎの時代庵

時代小説、時代劇の作品感想を書いています。司馬遼太郎、海音寺潮五郎作品が大好き。新選組、幕末物が大好き。

「新撰組捕物帖 源さんの事件簿」秋山香乃 河出書房新社

面白かったです!秋山さんの新選組モノでは私はこの本が一番好きです。

 

通常、新選組ものでは主役にならない井上源三郎さんが主役で、しかも「捕物帖」ですから、探偵チックなのです。

 

新選組の歴史を時間をおって書いていくのではなく、源さんの京での日常の中でミステリーを解いていくうちに、新選組の様子や登場人物が描かれていくという、ちょっと面白い構成。これが効いてます。

 

そして新選組のおなじみの登場人物たちがイキイキとイメージできて、こういう書き方もあるのだなあと感心しました。裏側から見ているっていう感じなのですよね。裏から光をあてて影絵のようになった土方歳三さまや近藤勇沖田総司を描き出している。「垣間見える土方歳三様」っていうのが、なかなかいいのですよねえ。

 

それからストーリーのつなぎ方がうまいです。最初と最後がぐっとつながっていて、時代の流れも感じさせます。

 

章としては、

第一章 仇討

第二章 二人総司

第三章 新撰組恋騒動

第四章 怨めしや

第五章 源さんの形見

 

と成っているのですが、「二人総司」では、沖田総司の本性みたいなものが描かれていて面白かったです。「新撰組恋騒動」では土方歳三様が女に惚れた??ということで沖田総司たちがどの女だと探ろうとするのですが、実は・・・というお話。

 

どのお話も、土方歳三様と沖田総司くんの仲のよさがよく描かれていて、読んでいて楽しいです。総司くんな歳三様にこう言っています。

 

それに秋山さんのお気に入り新選組キャラと思われる斉藤一も健在。「おんや」とクールに声をかける得体の知れない狐のような男、斉藤一。いい味出しています。

 

それから粋でいなせな江戸っ子御家人、伊庭八郎さんもここぞという時に顔をだします。八郎さん、いい男だねえ!伊庭八郎さんも、秋山さんのお気に入りキャラと思われます。

 

加えて、いろいろな料理が出てくるのですが、すごーく、おいしそうなのです。読んでいると、京料理を食べたくなります。

 

最後の「源さんの形見」とは何だったのか・・・。

それがわかると、涙が出ます。源さんは、鳥羽伏見の闘いで戦死していますから、第五章では、源さん抜きの話なのです。お人よしで世話好きな源さんが残した形見とは何だったのか。歳三様がその形見にかけた想いとは・・・。その謎が解かれた時、号泣です。

 

※この本のタイトルは「新選組」ではなく「新撰組」になっています。このブログではいつも通り「新選組」を使いました。