今回の主人公は、わりとマイナーな新選組メンバー、阿部十郎(近藤さんを墨染で銃撃したといわれている)、尾形俊太郎(山崎さんと一緒に監察方だった)、篠原泰之進(伊東甲子太郎の腹心)の3人。いえ、主人公というより、語り手ですね。この本の主人公は伊東甲子太郎のように思えます。
この3人の目を通して、伊東と土方歳三さまとの暗闘が語られていき、時世の変遷がそれにまとわりついていく。この本を読むと、伊東さんの悪戦苦闘がちょっと気の毒な気もしてきます。
前作でもそうだったけど、木内さんの描く新選組メンバーはみんなキャラがたっていて、それぞれが興味深いので、読んでいるとあっちこっちに視点が飛んで、少し難解に思えるかも。誰の目線で語られているのか、時々わかりにくいですね。
でも、語る人物はいろいろだとしても、伊東さんの行動を一貫して追っているように見えても、強烈な印象で、障子の向こう側の影絵のようにくっきりと浮かんでくるのが、土方歳三さま、沖田総司、斉藤一の三人です。山崎さんもいい味だしていますが。この三人のドスのきいた存在感、生き様が、他者の目を通して濃くあぶり出されてくるのです。面白い描き方しますね~木内さんって。
次のセリフは阿部十郎の沖田総司への感想。いいえて妙でしょう?
今回も、前作につづき、斉藤一が飄々と、しかしド迫力で、ここぞというところに登場。う~ん、木内版斉藤さん、いいですねえ~。大好きです。木内さん、相当、斉藤さんがお好きなのではないだろうか。
そして・・・この本、エンディングはちょっと救われます・・・。ああ、そうでしたか・・・ということで、優しい気持ちで本を閉じることができると思います。