うさぎの時代庵

時代小説、時代劇の作品感想を書いています。司馬遼太郎、海音寺潮五郎作品が大好き。新選組、幕末物が大好き。

「新選組血風禄」司馬遼太郎 中公文庫

 

司馬遼太郎新選組物といえば、「燃えよ剣」と「新選組血風禄」。

新選組血風禄」は短編集で、登場人物は様々。

「油小路の決闘」「芹沢鴨の暗殺」「長州の間者」「池田屋異聞」「鴨川銭取橋」「虎徹」「前髪の惣三郎」「胡沙笛を吹く武士」「三条磧乱刃」「海仙寺党異聞」「沖田総司の恋」「槍は宝蔵院流」「弥兵衛奮迅」「四斤山砲」「菊一文字」の15話から成る、これぞ、新選組物決定版です。

京都界隈の描写も楽しめて、私は「新選組血風禄」に書かれた場所を訪ねて京都巡りしました。土方歳三沖田総司近藤勇といった有名なメンバーだけでなく、あまり世に知られていない新選組隊士(フィクションも含めて)の生き様、死に様を司馬さんが渇いたタッチで描いています。

でも、やはり、私としては、土方歳三沖田総司にフォーカスしちゃいます(笑)。私は、この作品で、司馬さんの中の土方歳三像、沖田総司像、その二人の関係性は確立されたのではないかと思っています。

背高のっぽで初心。剣はめちゃくちゃ強く、どこか幼い所を残しながらも、どんどん人を斬る。そして飄々としている。わけのわからない部分がある。そんな沖田総司像は司馬さんが創り上げて、それを後世の作家がその像をまるで実像のように基盤にしていろいろな新選組物を書いたのでした。でも、司馬さんも、子母沢寛さんにいろいろな新選組関連資料を見せてもらって、この本は書いたわけで。

私の一番好きな話はやっぱり「菊一文字」です。総司を心配する歳三さまのやさしさと、一方で総司の甘さを批判する歳三さまの厳しさ。肺結核になり死を覚悟し始めた沖田総司が、700年経過した刀、菊一文字を手にして700年という時間の重みを敬うのです。

一話一話が、宝石のように輝いている傑作です。新選組ものといったらこれ!の一押しです。

 

燃えよ剣」と同様、「新選組血風禄」も幾度も映像化されています。でもやっぱり、1965~1966年放映版がダントツで素晴らしい(まだ白黒時代です)。「新選組血風録」原作をかなりな満足度で映像化しています。原作にはない土方歳三様の函館での戦いが最終話になっていて、若かりし森光子(新選組血風録のファンだったらしく出演を熱望したそう)が出ています。土方歳三栗塚旭沖田総司=島田順司の、黄金コンビが輝いています。二人ともテレビ出演初めてだったのに、よくこんなどんぴしゃりの役者さんみつけましたよね(二人とも劇団員だったそう)。ちなみに、沖田総司が江戸で最期を迎えるシーンもありますが、これがもう名シーンで。忍んできた歳三さまにむかって総司がいうのです。

「生まれ変わったら、また土方さんみたいな人とめぐりあいたいと思っているんですよ」

泣けます。号泣です。

 

また、「前髪の惣三郎」は大島渚監督によって映画化され「御法度」として話題を博しました。惣三郎を演じたのが、映画初主演の松田龍平松田優作の長男)。いや~。龍平君の凄みのある美しさ、素晴らしかった・・・。そして武田真治沖田総司を演じたのですが、背高のっぽの総司のはずがちょっと背が低かったのですが(笑)、いい味出してましたねえ。しかーし、ビートたけし土方歳三を演じたのは、私としてはかなり抵抗ありました・・・(笑)。

「御法度」は海外でも上映されたのですが、フランス人の友達が、この映画を見て(フランスでも上映されたのですね)、えらく感動していました。最後にたけし演じる土方歳三が桜の木をばっさり斬るシーンがあるのですが、それが忘れられないと言っていました。新選組、海を渡って、フランスでも知られるようになる・・・。私は嬉しかったです。