うさぎの時代庵

時代小説、時代劇の作品感想を書いています。司馬遼太郎、海音寺潮五郎作品が大好き。新選組、幕末物が大好き。

「誠を生きた男たち 歳三と総司」 河原総

 

私は土方歳三様が好き。そして歳三様が好きな人はたいてい、沖田総司とのコンビが好き。そう、私も土方歳三様&沖田総司コンビが大好きです。そしてこの二人のコンビが好きな人にはたまらない、この本。土方歳三様&沖田総司キズナを感じたかったら、この本は絶対的必読本ですっ!

 

タイトルに「歳三と総司」とあるように、この本は新選組のお話ですが、中心は歳三と総司の二人。この二人の強い絆。これがこの本のテーマであります。だから、もう、歳三と総司ペアが好きな人には、たまらないシーンがテンコ盛り。多摩の少年時代から、最期のときまで、二人の絆を中心に話が展開していきます。

ですから、近藤さんや他の隊士たちはかなり影が薄いです。とにかく、二人が生きて、闘い、そして死んだ、その一生を描き、二人が互いをどれほど大切に思っていたかを、切々と訴えてきます。

沖田が千駄ヶ谷で最期の時を迎えつつあるとき、会津に向かう土方歳三様が別れにきます。このシーンが泣ける~。

歳三様が総司にいうセリフがこれ。

泣けるわ~。

 

お互いにはお互いしかなくて。(このお話はボーイズラブものではありません。念のため。笑)。そりゃあ、総司くんも歳三様も、女の子と恋(?)したりしますし、花街に行ったりしますけどでも。二人にとっては、お互いを超えるような存在はありえないのです。生きるのも死ぬのも一緒。それが二人の思い定めた道。しかし途中で総司くんは結核で倒れてしまう。それでも総司くんは歳三様と一緒にいたくて。歳三様は総司くんを離したくなくて・・・。

この本には、二人の互いへの想いを表した美し~いフレーズがたくさんありまして。

 

 

「済まん。・・・確かに俺ァ自分勝手だ。今だってお前の気持ちより、俺の事しか考えちゃいねえ。でもな、動けなくなっちまってもいい。どんなに足手まといでも、俺ァお前を離したかねえ。もう、二度と何処へもやりたかねえんだ」

「土方さん・・・」

フッと総司は静かに笑うと

「土方さん、覚えてますか。俺ァあんたに誓ったはずだ。俺だってあんたを守る。あんたに何かある時ァ、俺もあんたの力になる、って。・・・あんたが新選組を続ける以上、俺も一緒について行きてえ。あんたが鬼になるんなら、俺も一緒に鬼になりてえ」

(総司くん肺病が悪化して一番隊組長をやめて一人命を絶とうとしたとき)

 

 

 

「・・・なあ総司、一緒に行こう。お前の面倒は俺が見る。今までお前の死に場所を、散々取り上げちまった俺だ。せめて最後はサムライらしく、お前の花道を飾ってやりてえ」

軍服に顔を埋めたままで、堪えきれずに総司は泣いた。

「土方さん、俺も行きてえ。・・・・もう、独りぼっちでいるのは嫌だ」

「総司・・・」

「俺だってまだ戦いてえよ。どこまでも、あんたと行きてえ。いつまでもこんな身体で生きていくより、どれだけ血を吐いたってあんたと行きてえ。もう、たった独りでいるのは嫌だ」

(歳三様が千駄ヶ谷で療養する総司くんに会津へ旅立つ前会いにきたとき)

 

 

などなど、歳三様&総司ペアが好きな人にとっては、もうド真ん中のシーンが連発。私はこの本を読み始めてから、ご飯も食べず、何もせず、3時間半ぶっとおしで読了しました。途中で止めることなんてできませんでした。

 

この本の中で、沖田総司ファンなら誰もが知っている京都光縁寺の「沖田氏縁者」は誰か?や、なぜ山南さんが新選組を脱走して大津に行き、総司くんがなぜ一人で迎えにいき、そしてなぜ山南さんがおとなしく屯所に戻ってきたか、についても、作者ならではのお話が展開されていて、興味深かったです。

 

河原総さん。初めて読んだ作家さんでしたが、とてもとてもすてきなお話でした。こういう本を書いてくださり、どうもありがとうございました。